加害者の損害賠償義務は、原則的には、事故が起きる前と後との状態の差額(金銭的に評価した額の差)の全額となります。
本来ならば、加害者に対しては事故が起きる前の状態に戻してくれと言いたいところですが、事故前の状態に完全に戻すことは不可能ですので、せめて金銭的な評価としては、事故の前後で同一の状態にしてもらおう、という考え方に基づきます。
(もっとも、被害者側に過失があれば減額されますし(過失相殺)、事故によって被害者が利益を得ている分があればその分が減額されます(損益相殺)。)
ただ、「差額」といっても、事故の態様や被害の程度から何か一定額に決まるわけではありません。
現実に生じた被害を、個々に積算して行く必要があります。
例えば、死亡事故の場合、一般的に生じる被害の項目は、主に次の通りです。
・慰謝料
事故によって生じた精神的な苦痛を慰謝するに足りる額になります。
とは言っても、それがいくらかの算定は極めて困難です。法律家の間では、基準額についてのある程度の共通認識があり、特別な事情があれば加算する、という算定をするのが一般的です。
・逸失利益
事故がなければ、得られていたであろう収入の分です。ただし、死亡していなければ支出していたであろう生活費の分は損害から減ります。
将来の仮定的な計算となり、算定には様々な考え方があり得るところですが、法律家の間では算定過程についてのある程度の共通認識があります。
・葬儀費用
150万円程度が認められ、香典は損益相殺しないのが一般的です。
・死亡までにかかった治療費等の出費があればその額