(2)からの続きです。
原審の高裁判決は、安全配慮義務違反は認めつつ、不法行為責任は認められないと判示し、第1審で認められていた賠償額から多額の遅延損害金と弁護士費用の損害をカットしました。
その理由として判決に書かれたのは、以下の短い、括弧書き内の1文だけです。
「(法人である控訴人に対する不法行為の請求については、被控訴人の主張・立証によってもこれを肯認し得る事実は認めるに足りない。)」
最高裁は、安全配慮義務違反を主張立証する場合に必要な訴訟活動は、不法行為に基づく主張立証する場合とほとんど変わらないという理由で、弁護士費用を損害として認めています。
ということは、安全配慮義務違反が認められるに足りる主張立証活動をすれば、不法行為も同時に認められる(少なくともほとんどの場合は)というのが最高裁の理由付けの前提にあるはずです。
この最高裁の理由付けと、上記原審高裁判決の結論は、果たして整合的な理解は可能なのでしょうか。
(4)に続きます。