(1)でも触れた再審の訴えは棄却されました。
平成24年2月24日最高裁判所第二小法廷判決は、「なお,上告人は,上告人の請求を一部棄却した原判決に対し,弁護士費用として190万円及びこれに対する平成18年11月22日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を求める限度で不服申立てをするものである。」 としていますが、これは事実と異なります。
上告及び上告受理申立ての趣旨は、原判決を「被上告人は、上告人に対し、2066万5436円及びこれに対する平成18年11月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。」 に変更せよ、というものであり、190万円以外の1876万5436円の分についての遅延損害金についても不服申し立てしているからです。
この1876万5436円の分についての遅延損害金の部分について判断の遺脱がある、というのが再審の申し立ての趣旨ですが、再審事由は認められないとの一言で棄却の決定がなされました。
誤りがあるのは明らかなように見えるのに、なぜ再審事由がないとされたのか、決定書には何ら理由が書かれておらずわかりません。
再審申立の理由は、民事訴訟法338条9号「判決に影響を及ぼす重要な事項について判断の遺脱」があるというものでした。
問題の「なお,上告人は,・・・を求める限度で不服申立てをするものである。」の部分は、なお書きのいわゆる傍論だから「判断の遺脱」はない、という形式論かもしれません。あるいは、傍論ですから「判決に影響を及ぼす重要な事項」ではない、ということかもしれません。
判決書の表現を見る限りは上告受理申し立てを一部排除した段階から申し立ての趣旨を見誤っていたよう見えますが、仮に上記傍論だからという理由で棄却が許されてしまうのならば、上記見誤りを再審で正すことは事実上できないことになりそうです。
なお、本件判決が、上告受理申立ての他の理由を排除した上での判断であること自体からは、上記判断遺脱は正当化され得ません。本件判決は、弁護士費用190万円に対する平成18年11月22日からの遅延損害金も不服申立ての範囲であると理解しているところ、当該理解は、上告受理申立ての他の理由を前提としないとあり得ないことだからです(弁護士費用が損害に含まれるというだけの上告理由ならば、弁護士費用分に対する遅延損害金の発生時期の不服申立てがあったことを根拠付けることはできません。このことは、再審訴状でも主張していました。)。