提えの提起前における照会の回答拒否と慰謝料


訴え提起前の証拠収集手段としてよく用いられるのが弁護士会照会(23条照会)ですが、弁護士会照会には強制力はなく、個人情報だからという理由で回答を拒否されることも少なくありません。
その拒否の理由が正当ではないにもかかわらず、拒否しても違法性はなかなか認められない、つまり、照会拒否した者に対する慰謝料請求をしても棄却されるのが実情であるようです。

そんな中、民事訴訟法132条の2に定められている訴えの提起前における照会に対する照会拒否は違法ではないかを問う慰謝料請求事件の判決を得ました(大津地裁彦根支部平成23年(ワ)144号事件。公刊物未搭載)。

当該判決は、提訴前照会制度の制度趣旨及び明文で定められたものであることを理由に、照会を受けたものは回答の義務を負う、と判示しました。
しかし、同法ただし書きの「除外事由に該当すると判断して、本件回答を拒否したこともやむを得ない」と判示して慰謝料請求は理由がない、として慰謝料請求は棄却しました。

照会を受けたものは回答の義務を負う旨判示したのは大きいですが、拒否したことはやむを得ないから慰謝料請求が認められない、という理屈はよくわかりません。
除外事由に当たるから、という理屈ならありえるかもしれませんが、しかし、本件は除外事由には当たらないケースです。
「やむを得ない」ということは、過失がないということなのでしょうが、そうであるならば、除外事由に該当すると判断した過程やその根拠が問題になるはずで、そこは何も判示していません(そこを検討すると、明らかに除外事由には該当しないので過失なしになったはずです。)。
当該判示に従うなら、照会の際に、除外事由には当たらないことをきちんと説明しておけば、回答拒否を違法とすることができた、ということになるのかもしれませんが、説明の巧拙で過失の有無が決まりそうで、それもおかしな話です。

除外事由が明文で定められ、回答自体が違法となることはあまり想定できないことを考えると、除外事由に該当しない以上は回答拒否は原則違法、すなわち、回答拒否のリスクは拒否したものに負わせるのが公正で公平だと思います。


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