体罰と懲戒


教師は、生徒に対する教育上必要な懲戒は許されている一方で、体罰を行うことは禁止されています(学校教育法11条)。
問題は、何が違法な体罰で、何が合法な懲戒か、ですが、この点について判断した最高裁判例があります(平成21年4月28日最高裁第三小法廷)。

小学校2年の男子が、廊下でじゃれつくように女子を蹴ったことを教師に注意されたところ、教師の後ろからでん部付近を2回蹴って逃げ出し、教師が、これに立腹して追い掛けて捕まえ、男子の胸元の洋服を右手でつかんで壁に押し当て、大声で「もう、すんなよ。」と叱った事件です。

最高裁は、教師の行為は悪ふざけをしないように指導するために行われたものであり、悪ふざけの罰として被上告人に肉体的苦痛を与えるために行われたものではないことが明らかである、やや穏当を欠くところがなかったとはいえないとしても、目的、態様、継続時間等から判断して,教育的指導の範囲を逸脱するものではないとして、「体罰」にはあたらないとしました。

注目すべきは、違法な体罰にあたるか否かについて、目的、態様、継続時間などの諸事情を総合的に判断していること、その結果、教師がかなり強度の有形力を行使しているようにも思われる本件でも、違法な体罰としていないことです。

いきすぎた体罰は言うまでもなく許されるべきではありませんが、適切な懲罰を与えることは有益でしょうし、あまりに「体罰」を広く捉えると、適切な懲罰に対する抑止効果をもたらすという問題もあります。
その問題について、上記最高裁判例は、一定の見方を示したと言えます。

弁護士 中村武志


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